ナチョ・ドゥアト スペイン国立ダンスカンパニー「ロミオとジュリエット」

11月29日(土) 滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール 大ホール 15:00〜
<キャスト>
ジュリエット: ルイサ・マリア・アリアス
ロミオ: ゲンティアン・ドダ
キャピュレット夫人: アナ・テレザ・ゴンザガ
キャピュレット: ディモ・キリロフ
マキューシオ: フランシスコ・ロレンツォ
ティボルト: クライド・アーチャー
乳母: ステファニー・ダルフォン
パリス: アモリー・ルブラン
ベンヴォーリオ: マテュー・ルヴィエール
その他 スペイン国立ダンスカンパニー
振付: ナチョ・ドゥアト
音楽: セルゲイ・プロコフィエフ
指揮: ペドロ・アルカルデ
管弦楽: 関西フィルハーモニー管弦楽団
ナチョ・ドゥアトの作品は前から見たいと思っていたのだが、びわ湖ホールに「ロミジュリ」が来ると知って、埼玉まで行くよりずっと近いので、迷わずチケットを購入した。これは彼がクラシック・バレエの名作全幕振付に挑んだ唯一の作品だそうだ。埼玉公演では音楽はテープだったようなので、まさかオケ付きとは思わず、座席選びをやや失敗したが、関西フィルの演奏は破綻もなく、プロコフィエフの美しい音楽も堪能することができた。(関西フィルも本当にうまくなったな〜 しかし、チケット代は埼玉よりずっと高いのであった)
ステージ上はやや暗く、幕が開いて、中央に横たわって眠っているロミオが小さく見える。彼は友人のマキューシオ、ベンヴォーリオに誘われて目を覚まし、町へ出かけて行く。髪を黒いスカーフでまとめているロレンツォ@マキューシオは、ひと目ですぐマキューシオとわかる存在感で、とってもカッコイイ。下半身やや太めの(失礼)ゲンティアン@ロミオがモサく見えるほど。(でもやはり顔はロミオの方がいい)ナチョの振付は、ややモダンで、ワイルドでスピーディー、荒っぽささえ感じさせるが、それでいてとても洗練されている。衣裳は決して現代のものではないのだが、とてもシンプルである。女性はノースリーブ、長い裾を翻して勇ましく(笑)踊る。本当に踊りは早く、激しく、ダンサー達が若くなければとても務まらないだろう、と思われるようなハードな踊りが次々展開される。
この舞台はセットもシンプルで、舞台をぐるりと囲んでいる台が、5段くらいの引き出し式になっていて、これを引き出して階段にしたり、椅子にしたりしている。さらに、後の壁も、スライド式で窓や戸口ができたり、とムダがない。
そこへ現れたキャピュレットの一行、いかにも悪そうな5人組。中でもひときわ目立つのがティボルトであろう。スキンヘッドで、黒人のようである。モンタギュー家との争いになるのだが、こちらは女性も交え、鋤や鍬のような農具で応戦するところがおかしい。解説によると、ナチョの構想では両家の確執を旧式な格式ばった厳格なものと、若く自由だが未熟なものの対立として描いているそうだ。
この抗争の結末は、紗幕に遮られてハッキリ見えない。最初から舞台上に斜めに掛かっていた天幕のロープをを争いの中で切って落とすと降りてきて幕になる。かすかな光で紗幕の向こうにベローナの大公らしき人物が両家を訓戒しているようにも見える。というように、舞台転換もとてもスピーディー。
幕の前に、ロミオの友人達が箱を引いてきて、中から仮面を取り出し、キャピュレット家の舞踏会に行く支度をする。3人ともチェッカー模様のシャツを着て、区別がつくようになっている。
一方、キャピュレット家では、ジュリエットが、乳母の手を焼かせている。この場面は、どんな版でもたいてい乳母をからかって逃げ回るジュリエットが小猿のようで、良家のお嬢様なのに、といつも思うのだが、この版では特にひどく、まるで野生児である。裸足で駆け回り、跳び回る。それでも、新しいドレスが少しは気に入ったようでやや女らしく振る舞ってみたりするのがカワイイ。そこへ両親がパリスを連れて来るが、これがオジサンだし、背も高くないし、全然魅力的でない。ロミオに出会う前でも、惹かれるような点はなさそう。ま、そんなことは両親から見れば大したことではないのだが。
舞踏会の場は、やはり例の音楽(「モンタギュー家とキャピュレット家」:クッションダンスの曲)が楽しみだが、それ以外に、ロミオ達がマジックや人形劇などを見せるのも面白い。ロミオはマジックで出したバラの花をジュリエットにプレゼントし、彼女のハートをキャッチする。
二人きりになって仮面を取り顔を見せると、そこへティボルトが現れ、二人を引き離す。去ってゆくキャピュレット家の若者達。キャピュレット夫人が現れ、ティボルトに灯りで案内されて去ってゆくのもとっても意味深な感じ。アナ・テレザ・ゴンザガ@キャピュレット夫人は、とっても美人である。
若い二人の逢い引きの場では、後の壁に窓と戸口ができ、戸口からジュリエットが腕だけ出したのをロミオが引いたりして、なかなか演出がおもしろい。二人のパ・ド・ドゥは、リフトが多いが、リフトされながらのジュリエットのポーズがアクロバティックというか、ものすごくスピーディーで、難しいリフトをいくつもこなしていて、とても見応えがあった。
ディモ・キリロフ@キャピュレットは、これまたスキン・ヘッドで、とってもコワイ。普通キャピュレット氏はバレエではあんまり存在感はないが、パリスとの結婚を拒むジュリエットに怒りまくり、こづきまくる。
乳母がロミオに手紙を渡しに行く場面も、モンタギュー派の若者達にからかわれる所など、映画と同じような演出になっていておもしろい。結婚式の場面では、後に十字架が立って光っていると思ったら、壁に十字の隙間が開いていて、そこから光が漏れてくるのでやっと気づいたが、最初は立体的な十字架に見えるなど、このセットはなかなか工夫してあり、やられた(笑)と思った。
両家の決闘場面では、ティボルトは隠し持っていた短剣でマキューシオを刺す、という卑怯な手を使うので、ロミオに殺されてもあんまりロミオが若気の至りで血気にはやって、向こう見ずなことをしてしまった、という感じがせず、彼に同情してしまう。このロミオは、結構真面目で一途な若者、という印象である。なので、あんまり後先かえり見ずの熱く燃える恋、という感じはしない。むしろ、激しいのはジュリエットのようで、ふわふわとした髪の毛といい、存在自体がとてもドラマチックに感じられる。ティボルトを失ったキャピュレット夫人の怒りと嘆きもすごかったが、私には、シュツットガルト版のキャピュレット夫人の方が大迫力に思えた。ティボルトを運んでいく担架の上に馬乗りになって嘆くんだもの。(終わった時、「あの死んだ人はジュリエットのお兄さん?あの女の人は息子が死んで泣いていたの?」と話し合っている二人連れがいたが、原作くらい予習してきてよ〜 ティボルトの存在って大きいでしょ?と言いたくなった)
二人の別れから、最後の悲劇まで、加速度的に舞台は進んでいき、とても展開が早く、退屈しない。
よくある(マクミラン版だったか)ように、お墓でロミオが死んだジュリエットをリフトして、振り回すような振付で踊るなどということがなく、(私はあそこはあんまり好みでない)彼が持ってきた毒を飲み干し、倒れ、まだ腕がかすかに動いているようなところで、ジュリエットが目を覚まし、「あぁ、もう少し早く彼女が目覚めていたら」などという気持ちにさせる。短い時間のクライマックスにもかかわらず、とてもドラマティックで、感動のうちに幕が下りた。
カーテン・コールで見たルイサ・マリア・アリアスはあまり若くないように見えたが、見事に16才のジュリエットを演じきった。彼女の目にかすかに涙が光っているように見えたのは気のせいだったろうか。
びわ湖ホールまで見に行ってよかったと思った。
でも、ホールの2階席以上は空席が目立ち、いつも人気のバルコニー席でさえガラガラ。1階もサイドは空いていた。土曜日なのにもったいない。西日本初上演らしいが、関西の人はこのバレエ団(ナチョ・ドゥアト)に対する認識が薄いのだろうか。
もっとも、11月下旬から12月にかけてバレエラッシュなので、メジャーなボリショイや、シュツットガルトの方に目がいってしまうというか、こちらまでチケット代を割けないのかもしれない。オケ付きとはいえ、1万円以上するのだから。
インタミでビュフェにいたら、ちょうど私達のすぐ横に、なんとナチョ・ドゥアト氏が!
関係者とワインなど飲んでいた。噂通り、背が高く、スリムでカッコイイ。彼の踊った昨年の舞台を見逃したのが本当に残念だ。カーテン・コールにも出てきて、メガネをかけていたが、パンフレットの素顔は、ちょっとスッキリした丹波哲郎という感じに見えた。(笑)
余談だが、会場で売られていたスペイン国立バレエ団のカレンダーがとてもカッコよかったので、つい買ってしまった。(またまたいらぬ散財を) 12ヶ月全て「ロミオとジュリエット」の写真で、このバレエ団のプログラム代わりになっていて、団員全員の写真と名前も載っていた。(横向きなのがちょっと残念)

表紙はキャピュレット夫人 裏表紙はマキューシオ(カッコイイ〜♪)

紅葉も美しく、良い琵琶湖の昼下がりであった。

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