野村万作・萬斎狂言公演@びわ湖ホール

びわ湖ホール

 ホールより琵琶湖を臨む
 
3月8日(土)  びわ湖ホール 中ホール 14:00〜

昨日の今日とてびわ湖ホールに行って来た。チケットは前から取ってあったのだけど。(オット孝行)
狂言は、大分前に名古屋に能楽堂ができた頃、何回か行ったことはあるが、ステージで見るのは初めて(かも)。
あの頃は和泉元彌氏が人気で、ややミーハー気分もあったが(笑)、普通能楽堂での公演だと、狂言は能の前に行われ、やや前座的な色合い、というと怒られるかもしれない。最初に狂言の見方や、独特の表現などの簡単なレクチャーもあって、おもしろく、親しみやすかった。能の方はどうも私の脳波とシンクロするのか、必ずと言っていいほど睡魔に襲われるので、(元彌人気の変化と平行して)チケット代が勿体なくてだんだん見なくなってしまったのだ。

プログラム:

*枕(解説)
*独・素狂言    野村 萬斎

萬斎さんは、映画「陰陽師」でしか見たことがなかった。が、彼はここ10年近くもこのびわ湖ホールで公演を行っていたのだそうだ。能楽堂とは違った「劇場バージョン」で、普通にはない照明や背景、音響もある。

やはりステージなので、中央に出た板敷き部分と、両側奥に廊下のようになった渡りの部分は能楽堂と同じだが(正確に言うと、能楽堂には右側に渡り廊下はない)、松もないし、後は4枚の無地の襖になっている。その上に「びわ湖狂言」の額、さらに上の方には紅白の提灯が交互に並び、寄席のような雰囲気である。

右側に演目を書いた「めくり」があり、黒子ならぬ後見役がしずしずと出てきて、1枚目をめくりあげると、「枕(解説) 独・素狂言」の文字。このあたりが寄席とは違って、整然とした動きで品がある。
萬斎さんが黒紋付きに縞の袴姿で登場して、真ん中に座る。本当にまるで今から落語が始まるかのようだ。で、今日の公演についての解説が行われる。

狂言は、とてもおもしろく笑いを誘う芸術であるが、その演目が発展して落語になったものもあるそうだ。今日の演目「鏡男」は「松山鏡」、「骨皮」は「金明竹」という落語になっているそうだが、どちらも聞いたことはない。落語つながりで、NHKの「ちりとてちん」等の話を交えながら、本当に高座の枕のような話が続く。萬斎さんは声が低いので、雰囲気はやはり狂言だが。

その中でやはり、今回の件に触れ、「びわ湖ホール、えらいことになっていますね〜」と、ひとしきりあった。彼は毎年この公演を続けており、来年で10周年なので、ホールが休館してしまったら彼だって困るのだ。劇場で配られた小さなプログラムにも(こういうものを作ってくれるのも、このホールの良い所。もちろん無料)来年の公演の予定まで印刷されている。(2009年3月28日(土)昼・夜《予定》)

今回劇場で配られたチラシ袋の中に、署名運動の用紙も入っていたので、もちろん、オットと二人分署名して即、提出してきた。PCからプリントアウトした分は、職場に持って行って署名を集めようと思う。昨日(7日)の夜公演でも、270通ほども署名が集まったそうだ。中ホールは定員約800名。入口に「完売御礼」の文字が出ていたので、見た人全員が署名してくれたら大した量になると思うのだが。(1枚につき5名まで書ける)

話が戻るが、狂言は他の演劇などと違い、出演者は自分の分だけでなく、全員分の台詞を覚えなければならないそうだ。1演目あたりの時間が短いから、何とかなるのだろう。昔から決まったものだけだから一度覚えれば何度も使えるだろうし。それなので、二人の台詞を一人で喋ることも可能、というわけで、動きをつけずに一人で座って台詞を喋れば、即ち落語になる、というわけである。

というわけで、次の「独・素狂言」というのは、一人で行う落語のようなものである。そういう名前は昔からあるわけではなく、この公演のために考え出したものだそうだ。なので、何の演目を演じるかは、当日のお楽しみ、ということで、今日の演目は「柑子(こうじ)」。

例によって、太郎冠者が、もらった柑子3個を主人に隠れて皆食べてしまい、その言い訳を色々するところが落語的でおもしろいのだが、やはり言葉は狂言で使われるものだし、狂言調の言い回しで、ややわかりにくいところもあった。

その後、舞台の提灯と額が上に上がって行き、4枚の襖も横に開くかと思ったら上に上がって、「鏡男」が始まる。

*狂言「鏡男」   夫: 野村万之介   鏡売り: 高野 和憲   
            妻: 石田 幸雄
            後見: 深田 博治

都に出かけた男が、土産に高価な鏡を買い求め、帰宅する。珍しいものなので、さぞかし喜ぶだろうと思い、妻に渡したところ、それを覗いた妻は、中に女がいると思い込み、腹を立てる。というのが簡単なストーリー。自分の顔を見たことのない時代の女性が、鏡を見て、中に写っている女性が自分自身だとは気づかないのも無理はない。 鏡にはカメラが仕込んであり、写ったものが後の襖のなくなった背景に映し出される。女装した男性の顔のアップなので、ちょっとぞっとしないが、(笑) リアルな感じが、この狂言ならでは、である。妻に怒られ、身に覚えがないのに謝りながら退散していく夫の姿が可笑しかった。

(休憩20分)

*狂言「骨皮」   新発意(しんぼち): 野村 萬斎   
            住持(じゅうじ): 野村 万作
            檀家: 竹山 悠樹   月崎 晴夫   
                 深田 博治
            後見: 岡 聡史

ある寺の年取った住持(住職の意)が、隠居して新発意(弟子)に職を譲る。住持は、新発意に、住持の心得として、檀那(檀家)さんの扱いが最も大事だと教える。にわか雨が降ってきたので、一人の檀家が寺にやって来て、傘を貸してほしいと頼む。新発意は、檀家を大事にしなければならないと思い、老僧秘蔵の立派な傘を貸す。それを住持に報告すると、住持はとんでもないことだと言い、檀家には「傘は住持がさして出かけたところ、突風が吹いてきて、骨と皮に吹き破れてバラバラになってしまったので、天井裏にあげておきました、と断れ」と教える。

次にまた別の檀家がやって来て、旅に出かけるのに馬を貸してほしい、と頼む。新発意は、住持に言われた通り、「馬は住持がさして出かけたところ、突風が吹いてきて、骨と皮がバラバラになってしまったので、天井裏にあげておきました」と言い、檀家は驚いて帰る。住持は呆れて、「馬の場合は、駄狂いをして腰が抜けたので厩の隅につないである、と言って断れ」と言う。

更にまた別の檀家が来て、住持と新発意を食事に招待する。新発意は、またまた住持に言われた通り、「老僧は、駄狂いをして腰が抜けたので厩の隅につないであります」と答える。
ちなみに、「駄狂い」には「積み荷を嫌がり暴れる」という意味と「発情して暴れる」の意味があるそうだ。というわけで、狂言では滅多にない色っぽいオチまでついて終わる。

全体で休憩を含めて1時間40分ほどであったので、あっという間に終わってしまったが、とてもおもしろくて大笑いしてしまった。来年もまた来たいな。そのためにも、びわ湖ホールが存続してほしいものである。

ホール前テラス

ホール前のテラス。左側の奥はフレンチレストラン「オペラ」。

デザート

そこで食べたランチのデザート。アイスクリームが濃厚で美味だった。