マリインスキー・オペラ 「イーゴリ公」
2月3日(日) 14:00〜 NHKホール
アレクサンドル・ボロディン「イーゴリ公」
プロローグと3幕
指揮 : ワレリー・ゲルギエフ
演出 : エフゲニー・ソコヴニン
2001年版演出 : イルキン・ガビトフ
音楽監修(2007年) : ワレリー・ゲルギエフ
「ポロヴェッツ人の踊り」 振付 : ミハイル・フォーキン
装置・衣裳 : ニーナ・ティホーノワ/ニコライ・メルニコフ
装置復元 : ヴャチェスラフ・オクネフ
照明 : ウラジーミル・ルカセヴィチ
首席合唱指揮 : アンドレイ・ペトレンコ
楽曲指導 : イリーナ・ソボレワ
出 演
イーゴリ公 (プチーヴリの公) : アレクサンドル・モローゾフ(セルゲイ・ムルツァーエフから変更)
ヤロスラーヴナ (その妻) : エカテリーナ・シマノーヴィチ
ウラジーミル (彼らの息子) : セルゲイ・セミーシクル
ガリツキー公 (ヤロスラーヴナの兄) : ワディム・クラーヴェツ
コンチャーク汗 (ポロヴェッツ人の長) :セルゲイ・ アレクサーシキン
コンチャコーヴナ (その娘) : ズラータ・ブルイチェワ
オヴルール (キリスト教徒のポロヴェッツ人) : ワシーリー・ゴルシコーフ
スクーラ (クドーク弾き) : グリゴリー・カラショーフ
エローシュカ (クドーク弾き) : アンドレイ・ポポーフ
ヤロスラーヴナの乳母 : エレーナ・ソンメル
ポロヴェッツ人の娘 : タチアーナ・パヴロフスカヤ
【ポロヴェッツ人(だったん人)の踊り】 : ポリーナ・ラッサーディナ(女性ソロ)、 イスロム・バイムラードフ(男性ソロ)、 エレーナ・バジェノワ、 ゲンナジー・ニコラーエフ
東京でオペラを観ることなど思いもよらなかったのだが、(最後に観たのは一昨年名古屋でキエフ・オペラの「トゥーランドット」 オリンピック人気に便乗して:笑)ジャパン・アーツの夢倶楽部会員の特典で、モニターになりアンケートに答えるとD席よりも安いお値段でB席で観られる、という誘いに乗っかって観てしまった。3階のサイド側だったが、それほど端でもなく、しかも最前列だったので結構よく見え、なかなか美味しい観劇であった。
今年のゲルギエフ指揮のマリインスキー来日公演の演目は4つ。他は「ホヴァーンシチナ」「3つのオレンジへの恋」「ランスへの旅」なのだが、それほどオペラに詳しいわけでない私が観るなら、やっぱり「ポロヴェツ人の踊り」のある「イーゴリ公」っきゃないでしょう。というわけで、ほとんどバレエが第一目的だった。というか、この演目があったから見ることにしたのである。マリインスキーのダンサー達が踊るのだもの、この機会を逃す手はないわ。誰が踊るのか、よく知らないで申し込んだのだが、前の日にバイムラードフと知って大喜び。しかも、あの美女のバジェノワも出るのだ。
ところが、3日は東京には珍しい雪の天候。前日の予報からそうは言っていたが、朝起きたらふだん豪雪地帯に近い自宅では車の上に少し雪があるだけで、雨模様。それほど気温も低くないし、と思って(一応防寒対策はかなりして)出かけてみたら、とんでもなかった。やはり米原付近では雪のための徐行ということで、新幹線は名古屋駅で約10分遅れ。途中少しは取り戻したのだが、小田原を過ぎた辺りから、田んぼや地面に雪が見え始めスピード・ダウン、横浜では道路にも積もっているではないか。結局東京に12分遅れて到着。それでもまだ良い方だった。湘南新宿ラインは雪のため全線不通と言っていた。休日だったのがせめてもだったのだろう。シャーベット状の雪で歩きにくいったらない。帰宅してからのニュースを見たら、雪で転倒、骨折などで100人以上が病院に運ばれたそうだ。雪国育ちの私がそんな目に遭ったらシャレにならない。
地下鉄なら大丈夫だろうと、明治神宮前駅で降りたので、約10分の歩き。お天気が良ければ気持ちのいい代々木公園界隈なのに、傘をさしていてもベタベタになって、ようやく到着。全くもう、なんでNHKホールなのよ〜
ここのホールはまだ3回目。2003年のパリオペ公演「ラ・バヤデール」と、06年の「美神」以来だ。できればここは避けたいホールの一つ。とにかく渋谷から結構距離がある上にバカデカイ。3階でもし後だったら、かなり視界は悪いだろう。最前列でよかった。勾配は急で、入場扉から席まで降りるのが恐ろしいほどだけど。天候のせいか、オペラなら皆オシャレしてくるかと思えばやはりダウンコートにスノーブーツというような人が多かった。1・2階も空席がチラホラあったが、3階のサイドはかなり空席が目立っていた。雪で来られなかった人もあるんだろうな〜
前置きが長くなったが、予定時間より約10分遅れでゲルギエフ氏登場。
☆プロローグは、[公国プチーヴリの広場] ポロヴェツ人との戦いを前にイーゴリ公の出陣式の場。
ジャパン・アーツのサイトで、ストーリーと写真が見られるが、今回のゲルギエフ版はかなり改訂がなされて、幕の順番が違っている。王妃の兄(上のサイトでは弟になっているが)に妃と公国を託し、イーゴリ公は息子のウラジーミルを伴ってポロヴェツ人との戦いに出陣する。上から見ると、遠目ながらオケピも見えるし、舞台が俯瞰的に見えて、人々の動きもよくわかる。セットも重厚だし、すごい人数だが、あとで、エキストラを募集していたことを知った。あの中には日本人も混じっていたのかな。歌が長くて、だんだん睡魔に襲われかかる。ハッと気がつくと馬に乗って出陣していくイーゴリ公の姿が見えた。馬は2頭出るという話だったので、その前にウラジーミルも乗って行ったのだろうか。もう少し早く気づいていたら、と残念。(笑) 結構長いプロローグだった。
幕が降りている間に序曲の演奏。長いが、さすがに良い音だ。
☆第1幕は、[ポロヴェツ軍の陣営] (本来は第2幕)
一転してアジアの大地という雰囲気。はるかかなたの平野(ステップ)に湖が見え、モンゴル式のテントが立ち並ぶ。ここの話は上記のサイトのストーリーを参照のこと。やがて、戦いで捕虜となっているイーゴリ公と息子を慰めるために、「ポロヴェツ人の踊り」が披露される。このオペラの曲で私が知っているのはここだけだ。一般にもこの曲だけは非常に有名で誰もが一度くらいは聞いたことがあるだろう。合唱付きで字幕もあるので、「こんなことを歌っていたのか」と初めて知った。要するにコンチャーク汗を讃える歌なのだが、字幕で最初「汗」がやたら出てくるのを「あせ」と読んでしまった私は??と思ったが、すぐ自分のバカさ加減に気づいて笑えた。「サンクトペテルブルグ建都3百年祭」の時のNHKBSで放送された「ポロヴェツ人の踊り」と同じだが、上から見ていると、あのゴチャゴチャしていた舞台上の人の動きがスッキリと見やすい。弓を持って踊るポロヴェツの男達の踊りが勇壮でカッコイイ。
群舞もそろっているが、ソロダンサーはさすがの踊りだ。バイムラードフはジャンプ、パ・ドゥ・シャなどを駆使して踊っていた。期待していたほどハジケてはいなかったようだが、オペラの舞台では全体の雰囲気を考えての構成なんだろうか。三日目で疲れていたのかもしれない。どうも、06年のルジマトフの「シェヘラザード」公演に加わっていたゲジミナス・タランダ率いるインペリアル・ロシア・バレエのキリル・ラデフ君の印象が強過ぎて、おとなしい感じに見えてしまった。あの時の舞台は、ゴレイゾフスキーの演出が少し違っていてソリストの踊りが突出していたから比べてはいけないんだろうけど。バイムラードフはメイクですっかりポロヴェツ人になっていた。ジャパン・アーツのブログではイケメンな写真が見られるのだけど。
バジェノワはさすがに美しく女らしい。背中がすごく柔らかく、反りが凄い。ラッサーディナはむしろ男性的な踊りに感じられる。二人とも一昨年の来日公演「海賊」での「パレスチナの踊り」「アルジェリアの踊り」が懐かしい。本当にマリインスキーって、キャラクテールも充実していて素晴らしいバレエ団だ。でもこのオペラを見ている人の大部分はあまりそれは知らないのだろうな〜
踊りの場面はあっという間に終わってしまった。私にとって、この公演の目的はここで果たされてしまったようなものだ。本来なら、もう少し後に出てくるはずなのだが。(従来の版では第2幕)
でも、観客も大いに湧き、大喝采。やっぱり踊りの素晴らしさは伝わるのだ。終幕を除き、幕毎の拍手はこの回が一番大きかった。ここで30分の長い休憩。
しかし1度しか休憩がないので、長く思われてもトイレタイムであっという間だった。このホールのトイレは個室が少なくて長蛇の列。到着した時に3階席から近いトイレの位置を確認しておくべきだった。3階席は初めてだったのだ。(しかし、来るたびに席の位置が違って、1階席も2階席も、各1回ずつ経験済み) こんなんで、紅白歌合戦の時は大丈夫なんだろうかと思ったが、もしかしたらその時は決まった休憩時間などないのかもしれない。(??かな?)
☆第2幕は[ポロヴェツ軍の陣営]
イーゴリ公の脱走の場面で、背景が少し1幕と変わっていて、モンゴル式のテント軍に圧倒される。(従来ならここは第3幕)
☆第3幕第1場 [プチーヴリの城壁] (第4幕冒頭部分)
ヤロスラーヴナのアリアと「農民たちの合唱」
城壁の前で河岸に(?)立っている(ように見えた)妃ヤロスラーヴナが夫と祖国の運命を嘆き、村人達の悲しみの歌がバックに流れる。このシマノーヴィチのソプラノが素晴らしかった。派手ではないが、確かな実力を感じさせる。
☆第3幕第2場 [ガリツキー公の館] (第1幕第1場)
ガリツキー一党の酒宴の場。ここでやっと村の娘達をさらってきては酒席にはべらせ、イーゴリ公に成り代わってプチーヴリの公になろうとするガリツキー公の狼藉・陰謀が描かれる。
オリジナルを見たことがないので何とも言えないが、本来1幕でやるところをここでやるなら、もう少し短くてもよかったのでは?と思えるほど増長な感じがした。
☆第4幕 [ヤロスラーヴナの館] (第1幕第2場)
村人達が館にやって来てガリツキー公の暴挙ぶりをヤロスラーヴナに訴える。妃は兄を咎めるが、彼は気にも留めない。
貴族達が館に押し寄せ、イーゴリ公がポロヴェツ人の捕虜となったことを妃に告げる。ポロヴェツ軍の来襲が近いことが告げられ、騒然となる中、貴族達は敵から町を守ろうと団結する。そこへイーゴリ公が帰還し、新たな戦いを前に人々が結集、歓喜のうちに幕となる。
ということで、今回はプログラムの印刷にも間に合わないほどの開幕ギリギリの変更によるゲルギエフの改訂版だったようだ。昨年末に中国・北京公演で初演されたそうだが。
オペラ初心者なので、果たして改訂版が良いのかどうかわからないが、ストーリーとしてはガリツキー公の暴虐ぶりが描かれるのが少し遅いようにも思える。が、最後にイーゴリ公が帰還してそこで終わるのは、纏まっているようにも思える一方、終わり方が唐突な感じもする。いずれにしても、ボロディンは完成せずして没したので、半端な感は否めないのかもしれない。(リムスキー・コルサコフとグラズノフにより補完) プログラムの解説によれば、補作者色の濃い完成版には批判も多いそうで、様々な補正案が出されているそうだから、今回のゲルギエフ版がとんでもない改作というわけでもないようだ。
舞台自体は演出・装置とも1954年のプロダクションの再生版、「ポロヴェツ人の踊り」は1909年フォーキン振付の伝統的なものだそうだ。
最近新演出のオペラの多い中、(新作が期待できない世界なので、演出だけがどんどん現代的・前衛的になっていく傾向にあるらしい) 12世紀ロシアの世界をたっぷり見せてくれて、荘厳・重厚な舞台だった。
この演目は「マリインスキー劇場の名刺と思ってほしい」と演出家のイルキン・ガビトフも言っているそうだし、チラシなどにも、「ゲルギエフ伝家の宝刀を抜く」等となっていたから、やはりロシアの伝統を受け継ぐ代表的な作品なのね。バレエ以外ほとんど何も予備知識なしで見たが、そうした伝統の重みや芸術性、ロシア人の魂など十分感じられたと思う。舞台装置も重厚(12世紀ロシアだから豪華ではないが)だし、衣装も豪華だった。歌手達も素晴らしかった。
が、残念なのはやはりイーゴリ公を演じる予定だったセルゲイ・ムルツァーエフが急病で(1・2日目は出演)最終日のみ休演したことだろうか。彼の歌を聞いたことがないのでわからないが、プロローグでイーゴリ公の歌がバリトンにしては何となくもの足りなかったのである。1幕でもバスのコンチャーク汗のセルゲイ・アレクサーシキンの方が声がよく響くように感じて腑に落ちなかった。 その時は代役のアレクサンドル・モローゾフだと知らなかったが、後でキャスト変更を知って、ムルツァーエフで聞いてみたかった。 でも、もう二度とこんな観劇をする機会はないかもしれない。
マリインスキー・オペラ、次回の来日は2011年だそうだ。フィナーレでは大量のテープと紙吹雪がステージの天井から落ちてきて、出演者や観客を驚かせていた。
終演したら5時40分で、やはり予定より大分伸びていた。
アレクサンドル・ボロディン「イーゴリ公」
プロローグと3幕
指揮 : ワレリー・ゲルギエフ
演出 : エフゲニー・ソコヴニン
2001年版演出 : イルキン・ガビトフ
音楽監修(2007年) : ワレリー・ゲルギエフ
「ポロヴェッツ人の踊り」 振付 : ミハイル・フォーキン
装置・衣裳 : ニーナ・ティホーノワ/ニコライ・メルニコフ
装置復元 : ヴャチェスラフ・オクネフ
照明 : ウラジーミル・ルカセヴィチ
首席合唱指揮 : アンドレイ・ペトレンコ
楽曲指導 : イリーナ・ソボレワ
出 演
イーゴリ公 (プチーヴリの公) : アレクサンドル・モローゾフ(セルゲイ・ムルツァーエフから変更)
ヤロスラーヴナ (その妻) : エカテリーナ・シマノーヴィチ
ウラジーミル (彼らの息子) : セルゲイ・セミーシクル
ガリツキー公 (ヤロスラーヴナの兄) : ワディム・クラーヴェツ
コンチャーク汗 (ポロヴェッツ人の長) :セルゲイ・ アレクサーシキン
コンチャコーヴナ (その娘) : ズラータ・ブルイチェワ
オヴルール (キリスト教徒のポロヴェッツ人) : ワシーリー・ゴルシコーフ
スクーラ (クドーク弾き) : グリゴリー・カラショーフ
エローシュカ (クドーク弾き) : アンドレイ・ポポーフ
ヤロスラーヴナの乳母 : エレーナ・ソンメル
ポロヴェッツ人の娘 : タチアーナ・パヴロフスカヤ
【ポロヴェッツ人(だったん人)の踊り】 : ポリーナ・ラッサーディナ(女性ソロ)、 イスロム・バイムラードフ(男性ソロ)、 エレーナ・バジェノワ、 ゲンナジー・ニコラーエフ
東京でオペラを観ることなど思いもよらなかったのだが、(最後に観たのは一昨年名古屋でキエフ・オペラの「トゥーランドット」 オリンピック人気に便乗して:笑)ジャパン・アーツの夢倶楽部会員の特典で、モニターになりアンケートに答えるとD席よりも安いお値段でB席で観られる、という誘いに乗っかって観てしまった。3階のサイド側だったが、それほど端でもなく、しかも最前列だったので結構よく見え、なかなか美味しい観劇であった。
今年のゲルギエフ指揮のマリインスキー来日公演の演目は4つ。他は「ホヴァーンシチナ」「3つのオレンジへの恋」「ランスへの旅」なのだが、それほどオペラに詳しいわけでない私が観るなら、やっぱり「ポロヴェツ人の踊り」のある「イーゴリ公」っきゃないでしょう。というわけで、ほとんどバレエが第一目的だった。というか、この演目があったから見ることにしたのである。マリインスキーのダンサー達が踊るのだもの、この機会を逃す手はないわ。誰が踊るのか、よく知らないで申し込んだのだが、前の日にバイムラードフと知って大喜び。しかも、あの美女のバジェノワも出るのだ。
ところが、3日は東京には珍しい雪の天候。前日の予報からそうは言っていたが、朝起きたらふだん豪雪地帯に近い自宅では車の上に少し雪があるだけで、雨模様。それほど気温も低くないし、と思って(一応防寒対策はかなりして)出かけてみたら、とんでもなかった。やはり米原付近では雪のための徐行ということで、新幹線は名古屋駅で約10分遅れ。途中少しは取り戻したのだが、小田原を過ぎた辺りから、田んぼや地面に雪が見え始めスピード・ダウン、横浜では道路にも積もっているではないか。結局東京に12分遅れて到着。それでもまだ良い方だった。湘南新宿ラインは雪のため全線不通と言っていた。休日だったのがせめてもだったのだろう。シャーベット状の雪で歩きにくいったらない。帰宅してからのニュースを見たら、雪で転倒、骨折などで100人以上が病院に運ばれたそうだ。雪国育ちの私がそんな目に遭ったらシャレにならない。
地下鉄なら大丈夫だろうと、明治神宮前駅で降りたので、約10分の歩き。お天気が良ければ気持ちのいい代々木公園界隈なのに、傘をさしていてもベタベタになって、ようやく到着。全くもう、なんでNHKホールなのよ〜
ここのホールはまだ3回目。2003年のパリオペ公演「ラ・バヤデール」と、06年の「美神」以来だ。できればここは避けたいホールの一つ。とにかく渋谷から結構距離がある上にバカデカイ。3階でもし後だったら、かなり視界は悪いだろう。最前列でよかった。勾配は急で、入場扉から席まで降りるのが恐ろしいほどだけど。天候のせいか、オペラなら皆オシャレしてくるかと思えばやはりダウンコートにスノーブーツというような人が多かった。1・2階も空席がチラホラあったが、3階のサイドはかなり空席が目立っていた。雪で来られなかった人もあるんだろうな〜
前置きが長くなったが、予定時間より約10分遅れでゲルギエフ氏登場。
☆プロローグは、[公国プチーヴリの広場] ポロヴェツ人との戦いを前にイーゴリ公の出陣式の場。
ジャパン・アーツのサイトで、ストーリーと写真が見られるが、今回のゲルギエフ版はかなり改訂がなされて、幕の順番が違っている。王妃の兄(上のサイトでは弟になっているが)に妃と公国を託し、イーゴリ公は息子のウラジーミルを伴ってポロヴェツ人との戦いに出陣する。上から見ると、遠目ながらオケピも見えるし、舞台が俯瞰的に見えて、人々の動きもよくわかる。セットも重厚だし、すごい人数だが、あとで、エキストラを募集していたことを知った。あの中には日本人も混じっていたのかな。歌が長くて、だんだん睡魔に襲われかかる。ハッと気がつくと馬に乗って出陣していくイーゴリ公の姿が見えた。馬は2頭出るという話だったので、その前にウラジーミルも乗って行ったのだろうか。もう少し早く気づいていたら、と残念。(笑) 結構長いプロローグだった。
幕が降りている間に序曲の演奏。長いが、さすがに良い音だ。
☆第1幕は、[ポロヴェツ軍の陣営] (本来は第2幕)
一転してアジアの大地という雰囲気。はるかかなたの平野(ステップ)に湖が見え、モンゴル式のテントが立ち並ぶ。ここの話は上記のサイトのストーリーを参照のこと。やがて、戦いで捕虜となっているイーゴリ公と息子を慰めるために、「ポロヴェツ人の踊り」が披露される。このオペラの曲で私が知っているのはここだけだ。一般にもこの曲だけは非常に有名で誰もが一度くらいは聞いたことがあるだろう。合唱付きで字幕もあるので、「こんなことを歌っていたのか」と初めて知った。要するにコンチャーク汗を讃える歌なのだが、字幕で最初「汗」がやたら出てくるのを「あせ」と読んでしまった私は??と思ったが、すぐ自分のバカさ加減に気づいて笑えた。「サンクトペテルブルグ建都3百年祭」の時のNHKBSで放送された「ポロヴェツ人の踊り」と同じだが、上から見ていると、あのゴチャゴチャしていた舞台上の人の動きがスッキリと見やすい。弓を持って踊るポロヴェツの男達の踊りが勇壮でカッコイイ。
群舞もそろっているが、ソロダンサーはさすがの踊りだ。バイムラードフはジャンプ、パ・ドゥ・シャなどを駆使して踊っていた。期待していたほどハジケてはいなかったようだが、オペラの舞台では全体の雰囲気を考えての構成なんだろうか。三日目で疲れていたのかもしれない。どうも、06年のルジマトフの「シェヘラザード」公演に加わっていたゲジミナス・タランダ率いるインペリアル・ロシア・バレエのキリル・ラデフ君の印象が強過ぎて、おとなしい感じに見えてしまった。あの時の舞台は、ゴレイゾフスキーの演出が少し違っていてソリストの踊りが突出していたから比べてはいけないんだろうけど。バイムラードフはメイクですっかりポロヴェツ人になっていた。ジャパン・アーツのブログではイケメンな写真が見られるのだけど。
バジェノワはさすがに美しく女らしい。背中がすごく柔らかく、反りが凄い。ラッサーディナはむしろ男性的な踊りに感じられる。二人とも一昨年の来日公演「海賊」での「パレスチナの踊り」「アルジェリアの踊り」が懐かしい。本当にマリインスキーって、キャラクテールも充実していて素晴らしいバレエ団だ。でもこのオペラを見ている人の大部分はあまりそれは知らないのだろうな〜
踊りの場面はあっという間に終わってしまった。私にとって、この公演の目的はここで果たされてしまったようなものだ。本来なら、もう少し後に出てくるはずなのだが。(従来の版では第2幕)
でも、観客も大いに湧き、大喝采。やっぱり踊りの素晴らしさは伝わるのだ。終幕を除き、幕毎の拍手はこの回が一番大きかった。ここで30分の長い休憩。
しかし1度しか休憩がないので、長く思われてもトイレタイムであっという間だった。このホールのトイレは個室が少なくて長蛇の列。到着した時に3階席から近いトイレの位置を確認しておくべきだった。3階席は初めてだったのだ。(しかし、来るたびに席の位置が違って、1階席も2階席も、各1回ずつ経験済み) こんなんで、紅白歌合戦の時は大丈夫なんだろうかと思ったが、もしかしたらその時は決まった休憩時間などないのかもしれない。(??かな?)
☆第2幕は[ポロヴェツ軍の陣営]
イーゴリ公の脱走の場面で、背景が少し1幕と変わっていて、モンゴル式のテント軍に圧倒される。(従来ならここは第3幕)
☆第3幕第1場 [プチーヴリの城壁] (第4幕冒頭部分)
ヤロスラーヴナのアリアと「農民たちの合唱」
城壁の前で河岸に(?)立っている(ように見えた)妃ヤロスラーヴナが夫と祖国の運命を嘆き、村人達の悲しみの歌がバックに流れる。このシマノーヴィチのソプラノが素晴らしかった。派手ではないが、確かな実力を感じさせる。
☆第3幕第2場 [ガリツキー公の館] (第1幕第1場)
ガリツキー一党の酒宴の場。ここでやっと村の娘達をさらってきては酒席にはべらせ、イーゴリ公に成り代わってプチーヴリの公になろうとするガリツキー公の狼藉・陰謀が描かれる。
オリジナルを見たことがないので何とも言えないが、本来1幕でやるところをここでやるなら、もう少し短くてもよかったのでは?と思えるほど増長な感じがした。
☆第4幕 [ヤロスラーヴナの館] (第1幕第2場)
村人達が館にやって来てガリツキー公の暴挙ぶりをヤロスラーヴナに訴える。妃は兄を咎めるが、彼は気にも留めない。
貴族達が館に押し寄せ、イーゴリ公がポロヴェツ人の捕虜となったことを妃に告げる。ポロヴェツ軍の来襲が近いことが告げられ、騒然となる中、貴族達は敵から町を守ろうと団結する。そこへイーゴリ公が帰還し、新たな戦いを前に人々が結集、歓喜のうちに幕となる。
ということで、今回はプログラムの印刷にも間に合わないほどの開幕ギリギリの変更によるゲルギエフの改訂版だったようだ。昨年末に中国・北京公演で初演されたそうだが。
オペラ初心者なので、果たして改訂版が良いのかどうかわからないが、ストーリーとしてはガリツキー公の暴虐ぶりが描かれるのが少し遅いようにも思える。が、最後にイーゴリ公が帰還してそこで終わるのは、纏まっているようにも思える一方、終わり方が唐突な感じもする。いずれにしても、ボロディンは完成せずして没したので、半端な感は否めないのかもしれない。(リムスキー・コルサコフとグラズノフにより補完) プログラムの解説によれば、補作者色の濃い完成版には批判も多いそうで、様々な補正案が出されているそうだから、今回のゲルギエフ版がとんでもない改作というわけでもないようだ。
舞台自体は演出・装置とも1954年のプロダクションの再生版、「ポロヴェツ人の踊り」は1909年フォーキン振付の伝統的なものだそうだ。
最近新演出のオペラの多い中、(新作が期待できない世界なので、演出だけがどんどん現代的・前衛的になっていく傾向にあるらしい) 12世紀ロシアの世界をたっぷり見せてくれて、荘厳・重厚な舞台だった。
この演目は「マリインスキー劇場の名刺と思ってほしい」と演出家のイルキン・ガビトフも言っているそうだし、チラシなどにも、「ゲルギエフ伝家の宝刀を抜く」等となっていたから、やはりロシアの伝統を受け継ぐ代表的な作品なのね。バレエ以外ほとんど何も予備知識なしで見たが、そうした伝統の重みや芸術性、ロシア人の魂など十分感じられたと思う。舞台装置も重厚(12世紀ロシアだから豪華ではないが)だし、衣装も豪華だった。歌手達も素晴らしかった。
が、残念なのはやはりイーゴリ公を演じる予定だったセルゲイ・ムルツァーエフが急病で(1・2日目は出演)最終日のみ休演したことだろうか。彼の歌を聞いたことがないのでわからないが、プロローグでイーゴリ公の歌がバリトンにしては何となくもの足りなかったのである。1幕でもバスのコンチャーク汗のセルゲイ・アレクサーシキンの方が声がよく響くように感じて腑に落ちなかった。 その時は代役のアレクサンドル・モローゾフだと知らなかったが、後でキャスト変更を知って、ムルツァーエフで聞いてみたかった。 でも、もう二度とこんな観劇をする機会はないかもしれない。
マリインスキー・オペラ、次回の来日は2011年だそうだ。フィナーレでは大量のテープと紙吹雪がステージの天井から落ちてきて、出演者や観客を驚かせていた。
終演したら5時40分で、やはり予定より大分伸びていた。
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