ICON:伝説のバレエ・ダンサー、ニジンスキー妖像

「ニジンスキー・プロ」の会場で売られていたので手にとって眺めることができ、気に入ったので購入した。そのため、限定3本のみ、というベジャール版でパトリック・デュポン出演という珍しい「牧神の午後」のビデオも売られていたのだが、手持ちが足りなくなってそちらは諦めた。まぁ、私はデュポンには思い入れがないので、別にいいんだけど。ベジャールだし。(しかし、そんなビデオがあったなんて、聞いたことがなかった。Amazonで検索かけたけど、引っかかってこなかったし。)
この本は、A4版で写真が多い。現存するニジンスキー関係の写真はほとんどすべて載っているのではないかと思うほどである。もちろん、ディアギレフとの件や、バレエ・リュスに関する本文もあるが、注目したのは、非常にイラストが多いことである。様々な演目のプログラムの他、先日の「舞台芸術の世界」展でも展示されていたジョルジュ・バルビエのイラスト「ル・カルナヴァル」「シェエラザード」「薔薇の精」「クレオパトラ」等の他、ルードヴィヒ・カイナー、ドロシー・ミュロック、ロバート・モンテネグロのイラストもあり、美術書としても魅力的なものである。
また、帯にもあるように、熊川哲也の「タイムマシンに乗って踊り比べてみたい」と語る記事もある。そういえば、ルジマトフやマラーホフなどのロシアのダンサーや、ジュド、ルグリ、イレールなどパリオペのダンサー達に比べて、ロイヤル系の彼にはこうしたニジンスキーの演目を踊る機会は比較的少なかったようだ。「薔薇の精」「ペトルーシュカ」は踊ったことがあるそうだが。
跳躍が高いと賞賛されるダンサーにとって、飛んだまま降りてこなかったと言われるニジンスキーの伝説はやはり魅力的なものなのだろう。彼もいつか「ニジンスキー・ガラ」を上演してみたいと言っているので、近い将来Kバレエで上演されるかもしれない。どんなものになるのか、こわいような、楽しみのような。都さんのニンフやバレリーナ人形、シルフィードなども見られたら嬉しいのだが、「ニジンスキー・プロ」では女性ダンサーはやや脇役の感があるからな〜
あと、薄井憲二氏と、この本の編・著者の芳賀直子氏の対談もあり、ニジンスキーに関しては基礎知識の少ない人にも取りつきやすい本だと思う。(そういえば、鈴木晶氏の「ニジンスキー/神の道化」途中までしか読んでいなかったなー。今年中には読了しなくては)
Tistou les pouces verts 「みどりのゆび」

4月4日のニーナの記事に関連して、このブログによく来てくださるsweetbrierさんのブログに、4月6日グルジアの「バラ革命」に触れた「銃口に花を」という記事がある。そこに出ている、ピアニスト、ジョヴァンニ・ミラバッシのソロアルバム“AVANTI!”内封のリーフレットから「アメリカ国防総省前の反戦デモ,1967年」のジャケット写真を見て、昔読んだフランスの児童文学'Tistou les pouce vert'(緑の親指のティスト)というのを思い出した。
大学時代、フランス語の授業でテキストとして読んだものである。1957年の作品だが、その当時は日本語版が出ていたのかどうかは知らなかった。現在の日本語版はこちら(上の図)、フランス語版のオリジナルイラスト版はこちら、新版はこちら(下の図)である。新版の方は、いかにもフランスらしい色鮮やかな絵が美しい。でも私が読んだテキストはモノクロだったが、ジャクリーヌ・デュエムのオリジナルイラスト(上と同じ)がついていて、この絵が好きだった。
ストーリーについてはこちらがわかりやすい。しかし、肝心の部分があまり書いてない。
わかりやすくいうと、ティストという名の(私のフランス語の先生は確かそう呼んでいたが、訳本はいずれも「チト」又は「チスト」と呼んでいる)大金持ちの幼い一人息子がいた。彼は学校に行っても、眠ってしまうばかりで何も覚えないので、家で、庭師のムスターシュ(頬髭という意味で、イラストのように髭がすごく大きい)について園芸を学ぶことになった。
タネを蒔くために、土に親指を入れて穴を空けていくと、不思議なことに、彼の開けた穴の所からはすでに植物の芽が出て花が咲いていた。
「君はみどりの親指を持っているんだよ」とムスターシュは驚く。
英語でも、green thumb という言葉があって、園芸の上手な人のことを言うが、それをフランス語にすると'pouce verts'となる。(vertは緑色の意味)
ティストのお父さんは、兵器工場の社長で、いわゆる「死の商人」である。戦争をやめさせたいティストは、ある日、お父さんの工場で作った大砲や銃など、兵器すべてから植物の芽を出させて使い物にならなくしてしまった。お父さんは兵器を作ることを諦める。こうして戦争はなくなった。
年老いた優しいムスターシュが亡くなってしまうと、悲しんだティストは地面から生えさせた植物のはしごを昇って、ムスターシュを追って天国へ行ってしまう。ティストは実は天使だったのだ。
やはり何となく「星の王子様」を思い出させる話だが、それほど有名にならなかったのは、ストーリーが教訓的なためだろうか。あるいは、天使という発想が安易だったからだろうか。
でも、これが日仏合同制作のアニメになっていて、見た人は涙を流すほど感動するらしい。(ああ、ジムナスティックやトルナディス、なつかしい!)90年の作品らしいが、残念ながらこれを見る機会も自分の子供に見せることもなかった。現在、AmazonのDVD情報を探しても見あたらない。絶版なのだろうか。是非さがして見たいものだ。せめて本も読んでみたいが、フランスAmazonに注文できるかな? 日本語版では訳語が気に入らない部分がありそうな気がする。

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